多様な生き方が認められつつある現在、いわゆる「おひとりさま」として最期を迎える方が多くなっています。
結婚をしなかったり、既婚でも子どもがいない生活を選ぶと、最後に悩みの種となりがちなのは遺産のことです。
通常、遺産は配偶者・子ども・孫(第一順位)、両親・祖父母(第二順位)、兄妹・甥姪(第三順位)の順に相続させる相手が決められます。
ではその相続順位のうちに相続人が存命していない場合、遺産はどうなるのでしょうか。

相続人該当者がいない場合の遺産は国庫に帰属する

相続順位内に相続させる相手が存在していない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。
しかし、国庫に行くまでには相当な時間がかかります。
相続人のいない遺産は相続財産管理人が選定され、通常は相続人が進める手続きを、司法書士や弁護士などが相続財産管理人となって代わりに進めていきます。
おおよそ一年から一年半をかけて、本当に相続人がいないかどうか確認した後、相続人や特別縁故者がいないと判断されれば遺産は国庫に帰属されます。

実際にあった独身の方の相続手続き例

えん道グループではこのような事例を扱いました。
被相続人は女性。まず当グループでは本当に相続人がいないか調査をいたします。
その結果、夫、両親、5人の兄妹と甥はすでに亡くなっており、子どもはいないことが分かりました。つまり、相続順位第一位、第二位、第三位すべて該当者はいないことになります。
遺言書もありませんでした。
特別縁故者もいなかったため、遺産はすべて国庫に帰属させることになりました。

国庫に帰属させる以外の方法

「お世話になった友人に遺産を渡したい」「支援している団体に遺産を寄付したい」など、遺産を法定相続人以外に渡したい方もいらっしゃるでしょう。
そのように法定相続人以外に財産を贈与することを「遺贈」といい、それを継ぐ人は相続人ではなく「受遺者(じゅいしゃ)」と呼ばれます。
遺贈先に多いのは下記のような相手です。

  • 入籍していないパートナー
  • お世話になった恩人
  • 信頼できる親友
  • 賛同する団体

事実婚のパートナーや、叔父や従兄弟など相続権がない親族へ遺産を渡したい場合は遺言書を作成し遺贈しましょう。個人だけではなく団体へ渡すことができるのも遺贈の利点です。

しかし、遺言書で相手の氏名、住所、相続内容の詳細が特定できないと受遺者は遺産を受け取ることが出来ません。
そのため、遺贈を考えている方は生前から不備のない遺言書をしっかり用意しておきましょう。

まとめ

  • 被相続人が独身で相続順位以内に相続人がいない場合、遺産は原則国庫に帰属する。
  • 法定相続人以外へ遺産を渡したい場合は、遺言書を残し、遺贈にすると可能である。

被相続人に法定相続人がいない場合の遺産の流れ、分かりましたでしょうか?
「自分の財産は国のものになればいい」という方も、実は知らないところで法定相続人が存在している可能性があります。また、帰属されるまでには手続きをする専門家が必要です。
また、遺贈をしたい場合は、遺言書を適切な書き方で残す必要があります。
ぜひ一度ご自身の周りを整理し、不安なところは専門家へご相談ください。